夕桜 [恋愛]
桜がどんどん咲き誇っていますね。あなたはどんな所で桜を楽しまれたのでしょうか。
桜、ということで一つこんなお話が浮かびました。今回は、陽菜 OL 32歳と 雄二 ジャズピアニスト 36歳、という登場人物でお話を作ってみました。
陽菜は友達に誘われて行った、ジャズのライブハウスでたまたま雄二と知り合いました。陽菜は全くジャズには無関心だったのですが、雄二が様々な曲を本当に楽しそうに教えてくれたり、時間のある時にはジャズピアノを弾いてくれたので、陽菜も何となくジャズに興味を持ち出しました。
そうこうしているうちに、陽菜はジャズを通して雄二に魅かれていきました。雄二の方は、特に何も言ってはくれませんでしたが、陽菜はお互いメールもよくやりとりしているし、会える時には会ってくれるし自分達は付き合っているのだ、と思っていました。
そのうち2年が過ぎました。
冬。冷たい北風が吹きつける中、雄二の出演するライブハウスへ足を運んだ陽菜。今夜はなぜか演奏が少し投げやりだったのが、気になりました。ライブが終わった後、陽菜の席へ雄二がやってきました。
「・・・今夜、ちょっと調子が悪いの?あんまり集中していないようだったけど・・・」
「俺。ニューヨーク行くよ。」
「え?」
「やっぱりもっと広い世界で自分を試して見たい。ちょっと向こうに知り合いが居て。向こうで生活していけそうなんだ。こんな機会は滅多にないし。連絡はパソコンのメールでするよ。」
陽菜は愕然としました。
「陽菜も何か、これっていう夢を持ってみろよ。毎日同じじゃつまらないだろ?」
「・・・私、雄二を待っていたいんだけど・・・」
「待つ、って言われても。いつ帰るか分からないし。」
雄二はそう言うと、他の知り合いの席へ移っていきました。陽菜は、居たたまれずライブハウスを出ました。
陽菜の顔に吹きつける北風。その冷たさに反して、思わず目から熱い涙がじわりと出ました。
「私。どうしたらいい?」
~つづく~
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